べべべ大魔王のおさんぽ

東大3年生の読書散策

クリティカルシンキング〜放射線は誰でも浴びてる??〜

 

どうも、べべべ大魔王です。

 

昨今の大雨で、西日本の崩れやすい土壌についてTVで言及されているのを見ました。

実は、西日本と東日本では土壌の質は大きく異なっていて、西日本では花崗岩(かこうがん)という火山由来の土が多く分布しています。この土は大変もろく崩れやすい土です。

今回話したいのは、花崗岩がもろいということではなくて、実は、放射線を出す「放射線源」であるということです。数年前の大震災で放射線について多くの報道を見かけましたが、実はそれ以前にも私たちは地表から放射線を受け続けています。しかも地表だけでなく、食品、空気、空からなど、様々なルートで放射線を浴びています。さらに驚いたことに我々の身体からも微量ながら放射線は出ています。数年前はあれほど避けようとしていた放射線は、実はこんなに身近なものだったんです(ごく微量なので健康被害はほぼ無いです)。

日本のみならず、地球上の人々はみな放射線を浴びていますが微妙に線量が異なります。下の図は環境省が発表した世界全体と日本の被曝量を図にしたものです。

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1つずつ説明していきます。

医療による被曝は、だいたいレントゲン撮影とCTです。がん治療の際にも放射線が使われます。

大地からの放射線は先ほど述べた花崗岩など微量に放射線を発する土からきています。

宇宙からも放射線は降ってきています。宇宙線というやつです。

食品にも放射線が含まれていて、それを食べることで内部から被曝します。特に海の食べ物に多く含まれます。

ラドン・トロンは空気中に含まれる放射性物質です。空気からも放射線を浴びてます。

 

もう一度見てみましょう。

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日本平均は世界平均と比べて被曝量が顕著に大きいですね。

「日本は医療が高度に発達した国で、レントゲン撮影などで放射線を浴びる回数が多いから」

「日本人は魚をよく食べるから、食品からの被曝が多い」

で、終わってしまいそうですが、ここでクリティカルシンキングです。

 

「そもそも世界平均ってなんやねん」というところから入りましょう。これは恐らく“世界平均”ではなく“先進国平均”です。食糧難や紛争問題で手一杯の途上国が悠長に放射線を測るでしょうか?そんなところにお金を使う余裕があるはずありません。となると、“世界平均”に含まれる国はほとんどが先進国に限られているはずです。

更に、このデータは国をひとつの単位として集計していると予想されます。北米大陸で先進国といえばアメリカとカナダの2カ国ですが、ヨーロッパには小さな国がたくさんあります。これだとデータサンプルに偏りがあります。

どういうことかというと、北米大陸は2つしかデータを取ってないのに、ユーラシア大陸はたくさんデータを取っていることになり、サンプルを取得した場所に偏りがあるということです。

例えていうなら、関西人2人と関東人200人くらい連れてきて、「家では赤みそor白みそどちらを使ってますか?」と聞いてみれば、当然白みそと答えるのは200人くらいで赤みそと答えるのは2人くらいでしょう。そのデータを見て、「日本全体ではほとんどの家庭で赤みそが使われ、白みそはほとんど使われていない」と読み取るのは無理がありますね。場所に偏りがあるとデータにも偏りが出ます。

今回の場合、〈世界平均vs日本平均〉というよりは〈ヨーロッパ平均vs日本平均〉の方が近いかもしれません。

 

そう見ると、ラドン・トロンに差があるのも分かります。

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ラドンとトロンは地表から空気へ溶け込み、家の中に滞留します。換気をすればラドンやトロンの濃度を下げることが出来ますが、ここで、地域の差が出ます。ヨーロッパの家屋はレンガや石造りで風通しが良いとはいえません。一方で日本や東南アジアなど高温多湿な気候では家屋に新鮮な空気を絶えず送り込むため、風通しの良い造りになっています。そう考えると、“ヨーロッパ平均”ではラドン・トロンからの線量が大きく、“日本平均”では小さいことを説明できます。もしくは、世界平均が東南アジアなどもきちんと含んでいれば、ラドン・トロンからの線量はもう少し小さくなっていたかもしれません。

この真偽を確かめるためには、「データ取得の過程」の情報が必要です。これが分かれば世界平均という曖昧なデータがどのようなものかはっきりします。

 

このように、環境省という信頼できる情報源であっても一旦立ち止まってみて、データの裏には何があるかを考えることは大変重要です。むしろ自分が信用している情報源からの情報は鵜呑みにしがちなので、自分の頭で考えて、自分の目で世界を見ようと努力することが大切だと思います。

 

参照

環境省「自然・人口放射線からの被ばく線量」

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1s-01-6.pdf